映画ノ壺

ダイアリー・オブ・ザ・デッド

ネタバレなし感想

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『ゾンビ』の故ジョージ・A・ロメロ監督がPOVに挑んだ異色ホラー!ホラー映画を撮影していた映画学科の学生たちの元に、ゾンビ出現のニュースが届く。遂に彼らの元にもゾンビが襲い掛かるが、ジェイソンは全てをカメラに収めようと使命に燃える中、学生たちは次々に犠牲になっていく...。

モキュメンタリー(POV)手法のロメロ・ゾンビ映画。

「何でカメラを手放さないで撮ってるんだ?」というモキュメンタリーホラーに付き物の違和感を、映画の主題として据えているため問題化していない。また、映画学科の生徒が本格的なカメラで撮った物を編集済みという設定なので「映像がブレブレで見づらい」というような問題も起きておらず、モキュメンタリーでありながら「でも映画ですよ」という割り切りを感じる作品。

内容はロメロ監督らしいゾンビ映画で、社会批判に満ちている。派手さはあまりないしっとりとしたゾンビ映画。

死人はノロいんだ、そんなに早く動いたら足 が もげる(作中セリフより)

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ネタバレあり感想

原題は「DIARY OF THE DEAD」でそのまま。制作費1000万ドルに対して興行収入は半分程度という残念な結果らしい。でも、ロメロ監督はこういう低予算映画のほうが良い感じがする。

モキュメンタリー・ホラーは個人的に「何でカメラを手放さないんだ」「画面が揺れて見づらい」「無駄シーン多すぎ」「完全リアルという設定なのにリアルじゃない点がある」といった不満があるが、この映画ではその不満点が解消されていると感じた。

「何でカメラを手放さないんだ?」については「何でだろう?」と映画の中で問う形になってる。映画の中でも疑問形にすれば、それは「映画構成のおかしい点」ではなくなる。作中ではそれなりに説明のヒントみたいな部分もあるから「何でだろうね?不思議だ、考えてみよう」というわけ。考えなきゃいけないのは観客側なのである。上手い!

「画面が揺れてみづらい」「無駄なシーンが多い」は個人撮影ビデオという設定にすると生じる問題で、なおかつ「単純に映画を観るのが苦痛になる要素」なので、排除するしかない。主人公が映画科の学生でカメラもちゃんとしている、しかも最終的に編集された映像 という事で排除してあるので問題なし。

モキュメンタリーホラーは「これは実際の映像です」という体にする事で「これは映画なのでオヤクソクですよ」という理屈が使えなくなるという問題がある。実際の映像なのにセットがショボかったり、役者の演技が不自然だったら「それはおかしい」という事になってしまう。本作ではこの点についてはちょっと曖昧なので、人によって受け取り方が違うかもしれないが個人的には「…とはいえ、映画ですよ」という作りに見えた。つまり「実際にあった事です」ではなく「実際にあった事風の映画です」という割り切りが感じ取れたので、映画的な演出や瑕疵についても気にならなかった。映像自体がいかにも映画的だし、セリフ等も飽くまで映画的。「モキュメンタリー」というのは「映画内の設定」という風にしか見えなかったし、それで良いと思う。

ゾンビ映画として何か革新的な所があるかというと特に無いと思うんだけど、これでこそロメロゾンビだという出来栄えだったので満足。