ユニコ 魔法の島へ
ネタバレなし感想
幻の動物・ユニコーンの子供ユニコが活躍するシリーズ第2弾です。 前作同様、手塚治虫の原作をもとに、スリルとファンタジー、メルヘンと愛と感動、そして冒険の6つの魅力がつまったアニメーション大作です。
手塚治虫原作の子供向けアニメ映画。「ユニコ」の2作目に当たり、1作目を見ていないと主人公の処遇に関する部分が分からないが、それ以外の部分は特に関連がなさそう。
1983年とかなり古い映画であるものの、アニメーションのレベルは非常に高く、お話も大人が観ても面白い内容になっている。ただし画質に関してはあまり良くなく、ゴミのような物がだいぶ入ってる。
あらすじとしては、人を幸せにする不思議な力を持ったユニコーンのユニコが、悪い魔法使いであるククルックにさらわれた人々を助けようとするお話。
ホラー映画ではないものの、怖いシーンが結構あって子供に観せるとトラウマ製造機になると思う。全体的に暗いムードの映画。
……とはいえ、やはり子供と一緒に観ると良いと思う映画。内容はとても良いし、コレくらいのトラウマあっても良いと思う。
ネタバレあり感想
この映画は子供の頃にビデオで観たことがあって、半ばトラウマ化して記憶に残っていたものの、長年タイトル等が分からず気になっていた(というか、青いブリンクと混同していた)。Twitterでたまたま画像を見かけてタイトルがわかったので、改めて観てみた。
ビジュアル的に結構インパクトがあって、とルビーのデザインとかククルックの動きとかがよく出来てる。
ところどころ「これCGじゃないの??」っていうシーンがあるけど、時代を考えるとセル絵なんだろうなぁ。すごい。24枚/秒のディズニーと同じ枚数でアニメーションしているらしい。動くシーンではよく動き、不必要に動かしすぎていなくて好き。
トラウマシーンだった「生き人形にされて城の建造に使われる」というシーンは、やはり怖かったけど、トルビーの笛が良いし山猫がコミカルな演出になっていて、怖くなりすぎない様に配慮しているのかな?と思った(まぁトラウマになったんだけど)。
ククルックは動きも言動も怖い上に、声が日本むかしばなしの人(爺さまの方)で不気味さがありすぎる。これはトラウマになる。
ふいご島に居たでかい龍みたいなヤツも、動きがなかなか怖い。怖い要素が動きしかないのに十分怖いという所がすごい。しかし最後まで正体不明だった。
登場人物が結構酷いな、と観ながら思った。皆酷いところに来てククルックの生い立ちが哀しいので、善悪があまりハッキリしない。
山猫は理不尽に暴力振るってくる上に、子分がやられたらホイホイ悪の手下になるし、なったらなったで率先して悪いことをするという「いかにもな小悪党」で、最後まで特に改心もしない。実はコイツが一番の悪者という可能性すらある。
トルビーは、身内に対する同情心こそ残ってるものの他の人間はどんどん人形にしてしまうし、行動原理が割りと自己中。ククルックが盛んに「さぼるな」と言っている辺りからして、サボり癖がありそう。最初に動物を人形にしようとするところでも性格の雑さを遺憾なく発揮していた。家に帰って魔法を披露してスルーされるシーンが哀しい。悪事でも家族を幸せにしてやろう、というのも「いかにもな小悪党」(割りと善いヤツ)の代表例。
チェリー(妹)は良い子なんだけど、ククルックに対する「怖がられて喜ぶなんて、嫌な性格だと思うわ」「失礼だけど、気持ち悪いわ」で笑ってしまった。ユニコまで「そうだ!気持ち悪いぞ!」と乗ってくる。ユニコもチェリーもズバズバ物を言い過ぎで、子供の純粋な言葉の暴力という感じがある。
ユニコは悪い点なさそうだと思ったら、最後の方で圧倒的に不利な状況っぽいのに「本気を出すしかないのか……?」みたいな舐めプ発言。どういう事なのかと思ったら本当に舐めプで一撃決着(しかもそれすら本気じゃない)という。そこからの同情発言。大物すぎる。最初から本気出しとけよ と思った。人が人形にされてとんやぞ?!
最初は西風も「こいつ結構酷い事しよるな」と思っていたんだけど、1作目のあらすじを読んだところ、神々が「誰もが苦労をせず幸せになるのは良くない」という理由で過酷な場所へ追放しようとした所を、西風が同情心で「比較的マシな所」に下ろしてるらしい。神々が酷い。
ククルックは…当然悪い事をしてるんだけど、生い立ちといい玩具で遊んでいるところといい、憎みきれない面がある。人間に捨てられて人間を恨んでいるけど、悪者として人間に喜ばれていたという過去を引きずっている。ククルックが悪い事を悪いと認識してやっていたのかどうかも怪しくて、生来身についた生き方だったのかもしれない。ユニコも「ククルックは悪い事しかできないんだよ、だって良いことをした事がないんだもの」と言っている。悪事が必ずしも悪意から行われるわけではない、というのは結構難しい話だと思う。
しかし、城の規模を考えると使われた動物の量ってかなりありそうなので、魔法が解けたらすごい事になるのでは……とか思った。島の様子を見るに全部は戻らなかったのかな。城の崩壊シーンがラピュタを彷彿とさせる(ラピュタより本作のほうが数年前)。
ユニコの宿命(一所に長居できず、神々によって移動させられる)といい、全体的に不条理感のある良い映画だった。